農家の技で家庭菜園!しっぱいしない!農業のやり方をプロ農家が栽培技術を解説します

冬キャベツの病気は、原因菌が時期によって増えることが原因。

【防げます】冬キャベツの病気は「季節で出る」予防方法。

キャベツの病気はいくつかあり、病気が出てから「何これ?」と調べていては

対処が遅くなり、せっかく植えたキャベツがどんどんイカれてしまいます。

特に台風被害では、台風後3日で対処しないと病気で畑が大被害を受けてしまうとも言われます。

 

 

予めキャベツの病気は予測されていますので、知っておくことで

「やっぱり出たな」「対処しよう」とすぐに手を打つことができて、キャベツ栽培がうまくいきます。

 

冬キャベツの病気の発生パターンとピークのグラフ軟腐病、根こぶ病、黒斑細菌病は台風シーズン台風シーズンに発生のピークを迎える

予防方法ですので、中には農薬を使って予防する方法も出てきます。

その時は、展着剤の作り方「減農薬栽培に効果が出る手順」を読んでいただくと

  • せっかく農薬をやったのに、効果がいまいち現れなかった。というトラブルを防ぐ
  • できるだけ農薬を少なくやりたい

という工夫を学ぶことができます。

 

■キャベツの病気は「季節で出る」ので予防が可能です。

冬キャベツの病気の発生パターンとピークのグラフ。病気の発生初期から、「菌が増えて発病しないように予防」していくことが大切です。

まず、グラフを見てください。収穫時期の11月までに、様々な病気がピークが来ていることがわかると思います。

 

キャベツ栽培のメインの時期は7月〜11月。収穫は11月〜4月までが、冬のキャベツの収穫時期です。

冬のキャベツの収穫時期であれば、

  • 収穫前の11月までにキャベツの病気を予防
  • 発病しても、初期で抑えることができて
  • 収穫時に発病しないようにすることができます

 

春キャベツ〜夏キャベツについては、気温が高いため収穫中も病気は出てきます。これは仕方がないので、

発病してしまったキャベツは捨てることもあります。

 

■キャベツの作付け前に予防する病気と、苗を植えてから予防する病気

キャベツの作付け前に予防する病気は「根こぶ病」と「萎凋病(イチョウ病)」の2つです。

この2つはキャベツを作付けする前に予防することができる病気です。

 

予防はできますが、発生してからの対処は難しくて、

  • うまくできればラッキー。
  • ラッキーを祈る

くらいしかできないかもしれません。

 

そして、キャベツの苗を植えてから予防、対処する病気は「尻腐れ病・株腐れ病」「黒腐れ病」「黒斑細菌病」「菌核病」「べと病」です。

こちらは、予防もできますし、発生してから軽症のうちであれば、対処も可能です。

重症になればなるほど、運が良ければ収穫できるかも。というくらいの被害に悪化しますので、よく見てあげることが大切です。

 

それでは順番にキャベツの病気の病名と症状、対処を、予防できるようになるレベルで解説していきます。

■キャベツの病気「根こぶ病」

キャベツの根こぶ病は、一度発生してしまうと「とんでもない」レベルで厄介な病気です。

次の年も対処していなければ必ず発生するよね。くらいの厄介さです。

 

ですので、必ず予防します。予防方法は下記で書いていますが、そこまで難しくないので、ちゃんと予防します。

□キャベツの病気「根こぶ病」の症状

キャベツの根こぶ病は、

  • 根にこぶができる
  • こぶができて、根から養分や水分を吸うことが難しくなる
  • そのため、大きく育たず、できたキャベツの重量も軽い

という症状が出てしまう、キャベツ栽培には致命的な病気です。

 

上記の症状は結果であって、栽培過程では

  • 成長過程で10月ぐらいの時期に発生しやすい
  • 発生すると、キャベツの外葉が萎れたり、しなびたりして水分が抜けたようになっている
  • 正常に育っているキャベツと明らかに色や見た目、元気さが違うので、はっきりわかる

という状態です。抜いてみると、根にこぶができているのでよくわかります。

□キャベツの病気「根こぶ病」の対処(作付け前の予防しか、ありません)苦土石灰を使う。

予防方法は、土を酸性にしないことです。根こぶ病は酸性の土を好むので、苦土石灰で中和します。

  • 苦土石灰を使う理由は、作付けにとても便利だからです。
  • 翌日に作付けしても、キャベツ苗にダメージがありません。

 

では、具体的なキャベツの根こぶ病の予防方法です。

具体的なキャベツの根こぶ病の予防方法

  • 1反(300坪)あたり、苦土石灰を100kgを土に混ぜる(1坪あたり1kg)
  • 元肥を入れて、畝を立てる
  • キャベツの苗を植える(当日でも、翌日でもOK)

これでOKです。

そんなに難しいことでもなく、費用もそれほどかかりません。

これで、酸性の土が中和されて、根こぶ病が発生しにくくなります。実際、出ていません。

 

◇キャベツの病気「根こぶ病」が出てしまった時の対処の話(頑張って収穫したい)

キャベツの根こぶ病が出てしまったら、もう「ラッキーで収穫できるかも」と願うしかない状況です。

しかし、やれることはあります。液肥でペンタキープを使ったり、葉面散布で栄養を供給することで

「少しでもよくしよう」という工夫をすることはできます。

 

実際にキャベツが運よくできたときの重量も上がりますし、やらないよりは効果はあります。

しかし、実際のところは

順調に育ったキャベツ>>>>水没したり、トラブルで小玉になったキャベツ>根こぶ病被害が出たけど、液肥で努力したキャベツ

というくらいです。

◇キャベツの病気「根こぶ病」が出てしまった時の対処の話(これ以上広げないために)

土の中で増えていくため、根こぶ病が出た土と出ていない土を混ぜないことです。

具体的には、根こぶ病が出たところを耕した耕運機やトラクターで、そのまま他の無事な畑を耕さないでください。

  1. 根こぶ病が出たところを耕した耕運機やトラクターで耕さない
  2. 耕す時は、耕運爪を洗って、土を落とすことで菌を伝染させない

この作業をすることで、今まで根こぶ病が広がったことはありません。

 

■キャベツの病気「萎凋病(イチョウ病)」

キャベツの病気、萎凋病(イチョウ病)はキャベツ産地で問題になる病気で、土の中で病原菌が繁殖してしまい、その土でキャベツを育てると高温時(萎黄病が発生しやすい26~ 30℃ )に出てしまう病気です。

 

キャベツ産地の存亡に関わるくらいの問題になるので、ちゃんと対処が用意されています。

□キャベツの病気「萎凋病(イチョウ病)」の症状

  • キャベツの萎凋病(イチョウ病)は、キャベツがどんどん黄色くなる
  • 黄色くなって萎れてしまう

という症状が出てきます。

1個2個なら「え?萎れた!?」とビックリするくらいで気が付かないかもしれませんが、

一気に10株20株萎れることもあります。

 

バーティシリウムという病原菌が原因で、土から伝染してしまうので、発生してしまうととても厄介です。

□キャベツの病気「萎凋病(イチョウ病)」の対処はYR品種を使う

キャベツが萎凋病(イチョウ病)が出てしまうと、次にキャベツを作付けしても、またイチョウ病が出てしまい、さらに増えてしまうことも多くあります。

この時の対処はYRというキャベツを作付けすることです。

萎黄病の対策品種のYR春空キャベツ。萎黄病が発生しやすい26~ 30℃ になりやすい夏収穫の品種にYRが付いていることが多い。

YRがついているキャベツの品種を育てることで、ほぼ被害を抑えることができます。

 

■キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」

□キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」の症状

キャベツの尻腐れ病と株腐れ病はほぼ同じと考えても大丈夫です。

  1. 株腐れ病の病原菌はリゾクトニア・ソラニーで、しっかりと腐ってしまいます。
  2. キャベツの尻腐れ病は、キャベツができてきたときに、重さで左右どちらかにキャベツが傾き、土とキャベツの外葉が接触します。
  3. そうして、黒腐りのように順番に腐っていき、最後には株が腐ってしまいます。

□キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」の対処と農薬

キャベツの葉が土と接触し、重みで葉が痛んだところに病原菌が入り、次第に腐っていくのが原因です。

病原菌が広がる前に早くとるというのは1つの手段ですが、

それでは畑でキャベツを順番に収穫していくということができません。

 

 

農家として対処する方法は

農家としてキャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」を対処する方法

  • 「バリダシン液剤5」という殺菌剤を利用する
  • キャベツが腐る病原菌の増殖を抑える
  • キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」の発病を抑えることができる

この方法で「キャベツができたのに、腐ってしまう」という被害を抑えています。

 

 

 

 

■キャベツの病気「黒腐れ病」

 

 

□キャベツの病気「黒腐れ病」の症状

キャベツの黒腐れ病は

  • 病原細菌:キサントモーナス・キャンペストリースという細菌
  • 外葉から病気になり、V字状に葉が黄色く症状が出てくる
  • 最後には腐ってしまう。
  • 収穫するときには、根元の切り口の周りの葉が黒く腐り、キャベツを収穫しても黒い腐りがあっていいキャベツがない。という状態になってしまう。

黒腐り病はそのまま対処しないと、10株収穫して9株腐りがある。というくらいキャベツの秀品率を落としてしまいます。

 

出てしまった場合、キャベツが黒腐り病で腐っているところだけ取れば食べられますが、

  • 漬物にしたい
  • 加工したい
  • 直売所に出したい
  • 出荷したい

と、良いキャベツを作りたい場合は「出せないキャベツ」になってしまうので、対処が必要になってきます。

□キャベツの病気「黒腐れ病」の対処の農薬

 

農家として対処する方法はキャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」と同じです。

 

農家としてキャベツの病気「黒腐れ病」を対処する方法

  • 「バリダシン液剤5」という殺菌剤を利用する
  • キャベツが腐る病原菌の増殖を抑える
  • キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」の発病を抑えることができる

この方法で「キャベツができたのに、腐ってしまう」という被害を抑えています。

 

■キャベツの病気「黒斑細菌病」

□キャベツの病気「黒斑細菌病」の症状

  • 最初はキャベツの葉に水滴が落ちたような斑点がポツポツと出てきます。
  • その斑点が大きくなったり、数が増えたりしていきます。
  • その斑点の部分は代謝できないので、次第に枯れてしまいます。
  • 病原菌はシュードモナス・シリンゲ・アリサレンシス

キャベツを栽培していると、ときどき見かける感じです。

キャベツの黒斑細菌病は放置は良くない

  • やはり放置するとどんどん繁殖して、土の中で生存して時期作の伝染源となるのでよくない
  • 伝染のタイミングは、発病したキャベツから雨風で飛散するので、栽培中にも広がっていきます。

と、怖いことが書いてありますが、

実際のところ、病気を分類すると黒斑細菌病という病名と症状がありますが、

黒腐り病の対処をしていると、自然とおさまる病気。という農家の現場での印象です。

 

詳しくは黒斑細菌病の対処の項目で書いていきます。

 

 

 

 

□キャベツの病気「黒斑細菌病」の対処の農薬

農家として対処する方法はキャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病・黒腐り病」と同じです。

 

農家としてキャベツの病気「黒斑細菌病」を対処する方法

  • 「バリダシン液剤5」という殺菌剤を利用する
  • キャベツが腐る病原菌の増殖を抑える
  • キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病」の発病を抑えることができる

つまり、バリダシン液剤5を散布することで、キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病・黒腐り病・黒斑細菌病」を防いでいます。

 

キャベツの病気「尻腐れ病・株腐れ病・黒腐り病・黒斑細菌病」へ対処するバリダシン液剤5の散布倍率

私もこの方法で使用しているので、問題がないものです。





病名 倍率 使用方法 使用時期 本剤の使用回数 散布液量 バリダマイシンを含む農薬の総使用回数
株腐れ病 800倍 噴霧器で散布 収穫7日前まで 5回以内 100〜300L/10a(1反) 5回以内
黒腐り病 800倍 噴霧器で散布 収穫7日前まで 5回以内 100〜300L/10a(1反) 5回以内
軟腐(なんぷ)病 800倍 噴霧器で散布 収穫7日前まで 5回以内 100〜300L/10a(1反) 5回以内

(ここには書かれていませんが、黒斑細菌病も解消されています:体感で、保証するものではありません)

この表は、バリダシン液剤5のホームページからキャベツに使用する部分のみを改変なく抜粋しています。

■キャベツの病気「菌核病」

□キャベツの病気「菌核病」の症状

キャベツの菌核病(きんかく病)は

  • キャベツの結球初期に増え始める
  • 菌核病とわかるのは、キャベツができてから「一気に出た!」という印象
  • 出た!と気がついたら全く収穫出来ない
  • 見た目の症状は、キャベツの表面に黒いネズミのふんがたくさんついているように見えて、気持ち悪い。
  • 菌核病になったキャベツは畑の外に出さないと、土の中で越冬、繁殖し、翌年以降の栽培でさらに増える

という感じの、「キャベツの収穫量が減ってしまう病気」です。

キャベツの菌核病が出た部分を剥けば食べれるわけでもなく、全く収穫出来ない上、菌を畑に残しておくと、増えてしまいます。

□キャベツの病気「菌核病」がでてしまったときの対処

前述したとおり、菌核病が出たキャベツの玉は全く収穫出来ないので、大きなロスになります。

 

菌核病がでたキャベツは、畑の外に出します。

外に出さないで、次回以降の作付けの範囲で畑の中に漉き込んでしまうと、菌核病の糸状菌(要はカビです)スクレロテイニア スクレロティオラムが土の中で越冬し、増殖します。

今年1個菌核病がでてしまい、そのまますき込んでしまった場合は翌年は同じ場所から2個〜6個、キャベツの菌核病がでてしまい、収穫出来なくなるイメージです。

□キャベツの病気「菌核病」を予防するための方法2つ

◇農薬を使用した予防により、ほぼキャベツの菌核病を防ぐ

使用する農薬はシグナムWDGのキャベツへの使用方法(BASFジャパンシグナムWDGの適用病害と使用方法から抜粋:PDF)




病名 倍率 使用方法 使用時期 本剤の使用回数 散布液量 ピラクロストロビンを含む農薬の総使用回数 ボスカリドを含む農薬の総使用回数
菌核病、株腐り病、黒斑病 1500倍 噴霧器で散布 収穫7日前まで 2回以内 100〜300L/10a(1反) 2回以内 2回以内

散布方法はコツがあって、できるだけ土にも散布液がかかるように、ゆっくり丁寧に散布することです。

 

その理由は、キャベツの菌核病が土壌で菌糸が繁殖し、キャベツの傷口などに伝染して発病するため、「土の表面に待機している菌糸にかけるイメージ」だからです。

 

散布タイミングは、キャベツが結球してくる2週間前〜結球初期位がタイミングです。

 

この方法で、かなりの菌核病を防ぐことが可能です。

◇水田との輪作で菌核病を死滅させ、軽減させる

キャベツの菌核病は「水没に弱い」という特性を持っているため、

  1. 水田
  2. キャベツ畑
  3. 水田

と輪作を行うことで、発生した菌核病を減らすことが可能です。

 

水田との輪作と、農薬での予防の2つを組み合わせれば、かなり使用農薬を減らしつつ、キャベツの菌核病を減らすことが可能です。

 

■キャベツの病気「べと病」

□キャベツの病気「べと病」の症状

  • 外葉、下葉、結球したそり葉に発生する
  • キャベツの苗、玉が出来てからといつでも発生する可能性がある
  • 黄色い点々、黒い点々という症状(淡黄色褐色〜黒褐色)
  • 病気の進展が早く、子葉の裏側が汚れたように白くかびて、生育阻害が著しい。

という感じです。

べと病は見た目がものすごく悪く、美味しそうなキャベツに見えなくなります。

□キャベツの病気「べと病」の対処の農薬

べと病では農薬の対処が一般的です。

べと病の対象農薬は

  • シグナムWDG
  • ランマンフロアブル
  • リドミルゴールドMZ

あたりが使用してみての感想としては、とても有効です。

 

べと病はべと病以外の農薬を使用することで、ある程度防げてしまいますので、あえてべと病のために農薬をチョイスすることが、経験上あまりありません。